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2012年10月 3日 (水)

第51話 「踏み絵」を踏ませるな

 私がお見合いした神戸のOLはスイーツが大好きだった。2回目のデートで神戸のレストランで昼食をとった後、彼女は「ご紹介したい所があるんです」と言って私をおいしいケーキがある喫茶店に連れて行った。そこのケーキはとてもおいしく、食いしん坊の私は大満足だったが、「私はスイーツ好きだから、結婚相手はそれを理解してくれ、一緒に食べてくれる人でないとダメです。結婚相手の第一条件はスイーツ好きです」という彼女の言葉にひっかかった。

 私は「私もスイーツ好きです。好みが似ていますね」と答えたが、「結婚相手の第一条件はスイーツ好きです」とは彼女の口癖のようだった。3回目のデートでも4回目のデートでも彼女は私をケーキのおいしい喫茶店に連れて行った。どちらのケーキも素晴らしかった。しかし、どちらの店でも彼女から「結婚相手の第一条件はスイーツ好きです」と言われ、私は閉口するようになった。
 
 私は彼女の言い方に「私と結婚したいなら、もっとスイーツ好きになりなさい」というような高圧的な響きを感じてしまったのだ。彼女にそんなつもりはなかったのかもしれない。たぶん、自分のスイーツ好きを強調したかっただけだろう。しかし、知り合ったばかりのお見合い相手に対していきなり「私の結婚条件は…」などと言うのはデリカシーに欠けると私は思った。

 私がお見合いした京都のOLから聞いた過去のお見合いのエピソードでも似たようなケースがあった。彼女がお見合いした大阪の会社員は大のフィギュア好きだった。会社員はお見合いの席上、「これまでのお見合いで『部屋がフィギュアでいっぱいです』と告白したら、お相手から断られたことがありました。でも、フィギュアのコレクションはやめられない。私はフィギュア収集を認めてくれる人としか結婚しません」と言い出したという。

 「フィギュア収集について『勝手にどうぞ』と感じで聞いていましたが、お見合いをしたばかりの相手に『認めてくれる人としか結婚しません』と宣言する無神経さにはむっとして帰宅後、すぐにお断りの返事をしました」と彼女は話した。

 お見合いでは、男女ともにこうした発言をする人が意外に多い。趣味や嗜好(しこう)に対する自分の思いをお見合い相手に理解してもらおうという気持ちが強いからだが、その気持ちの中には「自分の趣味がお見合い相手にとってNGかどうかを早く確認した方が交際を進めるうえで手っ取り早い。相手にとってもこれがわかれば、交際を続けるかどうかを早く見極められるから、手っ取り早いし、都合がいいはず。お互いのためだ」という発想が混じっているように思う。

 特に、自分の趣味のためにお見合い相手や交際相手から断られて傷ついた経験をもつ人は再び傷つくのを避けるため、自分の心を相手に対して開く前に、つまり相手に好意をもつ前に、断られる可能性のある趣味の話をしておこうと考えがちだ。しかし、これは安易だし、自分勝手な発想だと私は思う。

 この発想には相手が自分とのお見合いのために時間を割いてくれたことへの感謝の気持ちが欠けている。こんな発言をして自分の趣味が相手にとってNGとなる確率より、この発言そのものがNGとなる確率の方が高いもしれないという思いに至っていないのだろう。お見合い相手に対しては、まずお互いに共感し合える話題から始めてリラックスした雰囲気を作り、そのうえで話のキャッチボールをしながら「私はこんな趣味をもっています」と話すのがマナーだと思う。

 私が後輩から交際相手の趣味について相談を受けたら「よほど変わった趣味だったり、お金や時間を極端に浪費しない限り、個人の自由だから理解してあげてください。2人の間に愛情や相互理解の気持ちがあれば、乗り越えられるはずです」とアドバイスするだろう。しかし、交際相手が「私の趣味を認めてくれる人しか結婚しません」というような一方的な言い方をするようだったら、「協調性に問題があるかもしません。じっくりと交際してその辺りを見極めてください」と慎重さを求めると思う。

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