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2012年10月 3日 (水)

第43話 断り方

 お見合い相手について、お付き合いする気にならないと思えば、仲人さんを通じてお断りの返事をすることになる。仲人さんに伝える時、断る理由については「お話が合いませんでした」といった具合の漠然(ばくぜん)とした内容でいいと思う。

 断るに至った自分の判断について仲人さんに理解してもらおうと相手の欠点をあげつらう人もいる。たまに「そんな中途半端な断り方では、先方に納得してもらえない」と食い下がる仲人さんもいる。お見合い相手と縁がない仲人さんで、口が堅い人なら、同じタイプのお見合い相手を再び、紹介してもらわないようにするために、さりげなく相手の特徴を述べてもいいだろう。

 しかし、少しでもお見合い相手に伝わる可能性があるようなら、相手の欠点を責めるような断り方をしてはいけない。相手の心を傷つける危険性があるからだ。どんな状況でも、不用意に他人の心を傷つけたり、他人の恨みを買うのは社会人として失格だと思う。

 お見合いと直接、関係のない話で恐縮だが、新聞記者になる前、あるメーカーの購買部の新入社員として勤務した時のエピソードを紹介したい。私は社内で使う事務機器の購入を担当した。納入業者だったA社の対応が悪く、製品価格は高いうえ、納期もいいかげんだった。私は上司と相談したうえ、同じ事務機器のB社に納入先を切り替える方向で検討に入った。

 私は、あいさつのため来訪したB社の営業マンに「今日、来ていただいたのは現在、取引させていただいているA社の対応に問題があると判断したからです。値段が高く、納期も守られないことがしばしばなんです」と経緯を話した。

 B社の営業マンが帰った後、私と営業マンの会話を自分の席から聞いていた直属上司の課長が私を呼び、「君は社外の人と折衝するのには未熟だ。しばらく内勤の事務をしてもらう」とぴしゃりと言った。温厚な人から出た突然の厳しい言い方に、私は驚いた。

 その時、その上の上司である部長が、呆然としている私を見て笑いながら「君は女性と別れたことがあるか」と声をかけてきた。私は納入業者の選定と全く次元の違う話に戸惑いながら「いいえ、あまりありません」と答えた。

 部長は「男と女は別れ際が大事なんだ。別れ際にその人の人間性が出る。きれいに別れて、相手にはいつまでも『別れても好きな人』と思わさなければならない。これはビジネスの場でも同じだよ」と語った。

 「A社との取引を続けるなら、A社に対して対応の悪さを徹底的に責めていい。しかし、私たちは今、A社との取引を切ろうとしている。つまり別れ際だ。別れ際はきれいにして相手の恨みを買わないようにしなければならない。A社とB社は同じ業界だ。B社の営業マンにA社の悪口を言えば、必ずA社に伝わる」「悪口を言われたうえ、取引を切られれば、うちへの恨みが残る。A社には社員ばかりでなく、その家族もいる。その人たちをうちの敵にしてはいけない。敵にしてしまえば、うちの製品を買ってくれなくなるし、うちの評判を落とす要因もなる」

 私にはとても心に残る話だった。私はこれ以降、仕事でも女性とのお付き合いでも別れ際をできる限り、きれいにしようと努力した。

 これはお見合いでも同じだと思う。どんなに欠点のある相手でも自分とのお見合いに時間を割いてくれたのだから、お断りをするにしろ、感謝の念をもつべきだ。だから、仲人さんにお断りの返事をする時、相手の悪口を言ってはいけない。

 「相手の欠点をきちんと指摘して気づかせてあげた方が、次のお見合いに向けて参考になるから親切ではないか」という意見をおもちの方もいると思う。しかし、交際を断られた局面で、断った相手から自分の欠点を指摘されて冷静でいられる人は少ない。「よく教えてくれた」と感謝するより、その指摘が真実であればあるほど、ショックを受けたり、相手を恨みたくなる人の方が多いと思う。

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