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2012年10月 3日 (水)

第45話 過去を振り返るな

 お見合い経験が長くなり、良い相手となかなか出会えない“スランプ”に陥ると、以前に自分からお断りをした相手のことを惜しく感じることがある。「なぜお断りをしたのだろう」と後悔することもある。中には、断った相手との交際を再開しようと仲人さんにお願いしたり、相手に直接、連絡をとる人もいる。

 しかし、これは基本的にはやめた方がいいと思う。断るには断るだけの理由があったはずだ。今が孤独で、素敵な人とおつきあいをできていない状況の中で、“思い出の人”が良く思えるようになり、断った理由がおぼろげになっているだけだ。交際を再開したら、自分が相手について嫌だと思った点が再び鮮明になり、同じ理由で再びお断りをしなければならないケースが大半だと思う。

 お見合いではないが、私は知人の紹介で大阪のOLと交際したことがあった。美人で姉御肌(あねごはだ)のきっぷのいい女性だが、タメ口をきくのが玉に瑕(きず)だった。

 彼女は何かあるたびに「だから、あなたはだめなのよ」「このマザコン、しっかりしろ」などと私をはやした。私は冗談であることを十分に承知していたから、付き合い始めたころは軽く受け流してきた。しかし、私の友人に引き合わせた時も、彼女はこの調子だったので、友人は「彼女はいつも、あんな感じなのか」と目を丸くした。

 交際が長くなるにつれ、彼女は私に対してその気になってきたが、私は彼女の口調が耳障りになって避けるようになり、交際はやがて自然消滅した。
 
 私はその後、いくつかのお見合いをしたものの、実らず、恋人がいないまま1年が過ぎた。さびしさとあせりが増し、「私には二度とガールフレンドができないのでは」と思いつめ始めたころ、彼女のことを思い出すようになった。

 「美人でいい性格なのに、なぜ別れたのだろうか。タメ口ぐらい我慢すればすむことだ」と思い、彼女に連絡をとった。私は1年も彼女に連絡をとらなかった後ろめたさもあって、おずおずとデートを申し込んだが、彼女はあっさり「いいよ」と快諾してくれた。

 以前によくデートしたレストランで一緒に食事した。1年のブランクがなかったように、話が弾んだ。そのうち、私がうっかりして、テーブルの上のコップをひじで倒して中の水をうっかりこぼしてしまった。その時、彼女が笑いながら、いつもの口癖だった「だから、あなたはだめなのよ」を口に出した。

 これを聞いた瞬間、私は彼女のこれまでのタメ口の数々を一度に思い出し、「彼女と結婚したら毎日、『だから、あなたはだめなのよ』を聞かされるのだろうな」と思った。以前のデートでなぜ、自分が彼女に乗り気にならなかったのかがはっきりとわかった。その後も、彼女からタメ口が続出したので、せっかく再開したデートだったが、彼女との交際をこのデートで終わりにすることにした。その後、彼女に連絡しないままになり、交際は再び、自然消滅した。

 私の心変わりで彼女を振り回してしまったわけで、今になって考えると、申し訳ない思いがする。自分で結論を出して別れたのに、彼女との交際を再開したのは女性に対する自分の目、自分の判断についての自信に欠けていたからだと思う。

 多くの男女の交際を見ていると、大半は熱情の中で始まり、理性で結末を迎えていると思う。つまり、多くの人は別れる時、自分が思っている以上に賢明な判断をしている。だから、別れた人を惜しく思った時は、別れた時の状況を冷静に思い出してほしい。

 お見合いでお断りをした相手に直接、連絡するのはマナー違反だと思う。どうしても交際を再開したければ、仲人さんに頼むべきだろう。その場合でも、相手を不快にしかねないし、かなりの確率で相手はこちらへの気持ちがさめていると考えた方がいい。だから、それよりも相手についての希望条件を広げて新しい出会いに期待したほうが健全だし、賢明だ。

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