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2012年10月 3日 (水)

第50話 会ってみないと、わからない

 お見合いをするため仲人組織などに会員登録すると、紹介してくれる相手の釣書が郵送されるのを待つ毎日が始まり、自宅のポストの扉を開けるのが楽しみになってくる。私は帰宅してポストの中に釣書を入れた封書が入っているのを見つけると、いつも小躍(こおど)りする思いで、自宅に入り、うがいや着替えもしないうちに、封を切った。

 封書の中には全く知らない相手の経歴が書かれた釣書と写真が入っている。その人との出会いで私の人生がガラリと変わるかもしれない。それを考えると、私はいつも、ドキドキした。このドキドキ感は何とも言えない快感だった。

  釣書や写真を見て相手を気に入れば、早速、仲人さんに連絡してお見合いを申し込んだ。それからお見合いの日まで毎日、帰宅後に何回も釣書や写真を眺めながら「どんな人なんだろう」とワクワクしながら想像する生活になった。これも楽しい時間だった。封書を開ける時のドキドキ感とお見合いの日まで相手のことを思い描くワクワク感がお見合いの醍醐味(だいごみ)ではないかと思うこともあった。

 お見合いを重ねるにつれ、この快感が強まったものだから、「釣書や写真を見るのがこんなに好きな私はひょっとして“二次元フェチ”ではないか」と一時は本気で少し心配した。確かに、お見合いで“生身”の女性と会うと、想像と違うケースが多く、その落差にがっかりすることもたびたびだったから、会う前までの方がドキドキ感、ワクワク感で楽しいケースも多かったのだ。

 長くお見合いを重ねた経験から言わせていただければ、釣書や写真にはお見合い相手として必要な情報はあまりないと思う。釣書に書かれている家族構成や学歴、趣味などからでは、私が結婚選びで最も重要と考える自分との相性を知ることをできないからだ。「長女はのんびりしている」とか「スポーツ好きは積極的な人が多い」などとよく言われるが、これらは一般論にすぎない。

 写真も同様だ。写真をいくら長く見つめても相手の性格はわからない。ある時、届いた大阪のOLの写真は上品なお嬢さん風で、清楚な感じが気に入り、お見合いをすることにした。大阪のホテルのロビーで仲人さんに引き合わされた。仲人さんと別れた後、2人でホテルのコーヒーハウスに入った。その時、彼女から「コーヒー頼むわ、あんた、ほんまに新聞記者?」といきなりタメ口調の言葉が出てきてびっくりした。

 だから会わないと、相手のことはわからない。反対に言えば、会えば5分でも相手のことは結構わかるものだ。お見合いパーティーに参加したことがあった。5分ごとに相手を変えて会話し、最後に気に入った相手を指名し、双方が気に入れば後日、お見合いをするシステムだった。

 最初、私は「5分ぐらいの短い時間では相手のことを何もわからないだろう」と思ったが、実はそうではなかった。結婚を真剣に考えて参加している人たちばかりだから、皆が相手に対してしっかりと受け答えをする。それだけに5分も話せば、相手のことはある程度、わかった。少なくとも「この人とは合わない」という人は明確にわかった。

 私は若いころ、釣書や写真を見ただけで「この人とは合わない」と勝手に決め付けて、先方からお見合いの申し込みがあってお断りしたことがあった。しかし、こうした経験を重ねる中で、“書類選考”をしないことにした。仲人さんが勧めてくれる相手にはできるだけ会うようにした。特に、相手が私とのお見合いを希望した場合、私の希望条件に当てはまらなくても、会った。結婚選びで最終的には頼りになるのは自分の目と感性しかないとつくづく思う。

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